総 評 審査委員長 和田 章
日本免震構造協会は創立15周年をきっかけとして優秀修士論文賞を開設し、2008年秋より全国の大学に向け公募を行った。日本免震構造協会の活動を通して我々が常に望んでいるように、若い学生や若い研究者も大地震の災難から逃れることのできる新しい建築構造として、免震構造・制振構造に関する研究には熱が入っている。今回の応募にも、非常に優秀な論文が16も応募された。選考は、各論文について2ページに纏められた梗概を21名の全審査委員で読み、点数を付けることから始めた。よく行われているように、審査員と同じ大学の卒業生などは点を付けないなどの配慮を行ったのち集計し、上位の7編の論文を第一候補とした。選考委員会を開き、これら第一候補の修士論文の本論文を各委員で読み、7論文以外の論文にも再度目を通したのち、投票を行った。これについても、応募者の関係者は点を付けないこととし、集計ののち、平均値を算出して、上位の4つの論文を選出した。修士論文のテーマの選択、個々の研究の進め方は、大学によって、また指導教授によって同じではない。指導教官の研究室に長年の研究課題があり、その路線にのって進められる指導教授のイニシアチブの強い成熟度の高い研究と、指導教授の研究方針より若い学生の自発的な意欲に任せた意欲的な研究に、大別される。このように、修士論文の優劣をつけるのは簡単ではないが、この難しさにも配慮しつつ、4論文を選出した。免震構造・制振構造に関する研究がさらに推進されること、これらの新しい構造への若いファンがますます増えること、この勢いを活気付けるためにも優秀修士論文賞が末永く続くことを期待する。
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